為替相場での主役通貨と言えば米ドル(アメリカドル)です。世界の基軸通貨であると同時に、もっとも取引量が多い通貨です。

次いでユーロ、日本円と続きます。

為替取引(FX)を行う際には、各国の通貨プライスアクション(値動き)の特徴をおさえておくと、効果的に為替取引が行えます。

こちらでは為替相場において、為替取引を行う上でよく取引される「取引量の多い上位8通貨」の特徴について解説いたします。

為替取引を行うなら知っておきたい!各国通貨の特徴

為替相場における通貨のプライスアクション(値動き)はどれも同じに見えますが、各国の内政事情や経済状況などにより、その特徴やボラティリティなどはすべて異なります。

ダウ理論に従い規則正しく動きやすい通貨もあれば、乱高下したり値が飛びやすかったりする通貨もあります。

各国通貨の特徴をおさえておけば、為替取引を行う上で非常に役に立ちます。

米ドル(アメリカドル)- USD

米ドル(アメリカドル)は世界の基軸通貨です。

取引量は世界でもっとも多く、米国の経済指標発表時は世界から注目を集めます。

米ドルはクロスレートの基準通貨ですので、米ドルを基準として他の通貨の値段が決定します。

有事のときに資金を安全資産に移す「リスクオフ」でとても人気が高い通貨です。

日本円 - JPY

日本円は安全資産としても有名です。

過去、有事の際にはドルが買われる傾向がありましたが、2022年現在では円買いも見られるようになってきました。

日本円は米ドルとユーロに次ぐ取引量シェアがあり、世界3大通貨とも呼ばれています。

「安定した高い金融システム」「非常に低いインフレ率」「日本の経済が経常黒字であること」など、市場評価が高いのも特徴です。

流動性が高く、乱高下しにくい通貨です。

ユーロ - EUR

第2の基軸通貨がユーロです。

米ドルの次に取引量が多く、欧州中央銀行(ECB)政策金利の経済指標発表時にはボラティリティが増加し、プライスアクションが大きくなることがあります。

ユーロは1カ国だけの通貨ではなく、2022年現在ではEU(欧州連合)に加盟している27カ国中19カ国が採用している法定通貨です。

参考:SMBC日興証券

中でも特にEU経済をリードするドイツの経済指標発表時にはプライスアクションが大きくなることがあります。

またフランスも経済規模が大きいため、フランスの経済指標発表も注目を集めます。

ドイツとフランスの2カ国だけで、ユーロ圏全体のGDPのおよそ半分を占めています。

ユーロの特徴として、アラブ諸国やロシアが不安定化するとユーロ売りが加速するとされています。

ポンド(イギリスポンド)(英ポンド)- GBP

2022年現在世界で決済通貨としてよく使われるのは米ドルです。つまり国際間取引の多くは米ドルで決済されます。米ドルは世界の通貨の中でも信用度が高く通貨の力が強いからです。

しかし米ドルが世界の決済通貨になる前は、ポンドが国際的な決済通貨として使用されていました。

イギリスは2020年1月31日でEUを離脱しましたが、EUに加盟しているときもユーロを採択せず自国通貨のポンドを採用していました。

ポンドは2022年現在で円に次ぐ世界第4位の取引量があります。米ドル、ユーロ、円に比べて流動性が低いため、ボラティリティ(変動率)が高く値が乱高下しやすい特徴があります。

スキャルピングトレードでポンドが好まれるのは、ボラティリティの高さによって値幅が取りやすいからです。

カナダドル(加ドル)- CAD

以前はカナダポンドと呼ばれていましたが、米国と通貨制度を合わせたことによりカナダドルになりました。米ドルとよく連動しやすい通貨でもあります。

カナダは自国で石油、金属、森林などの資源が豊富に産出できる国です。そのため資源国通貨と言われています。

カナダドルの大きな特徴として、原油価格に連動しやすい傾向があることが挙げられます。

原油の価格が上昇すればカナダドルも上昇しやすくなります。逆に原油の価格が下落すればカナダドルも下落しやすくなります。

スイスフラン - CHF

永世中立国であるスイスの通貨スイスフランは、世界の有事の際に安全資産として資金の逃避先になることがあります。

相場が安定し強気買いができるリスクオンになると、売られやすくなる傾向があるのが特徴です。

取引量はイギリスポンドについで世界で5番目となります。

国際決済通貨(カレンシー通貨)でもあるため、スイスフランが米ドルに代わり決済通貨として使われることもあります。

特に国の規模が小さく国力が弱い国では、米ドルよりもスイスフランが好まれることがあります。

スイスフランは米ドルや日本円などに比べ指標発表時の情報が少ないことから、動く方向が読みづらい通貨でもあります。

オーストラリアドル(豪ドル)- AUD

オーストラリアはカナダと同じく資源大国です。そのためオーストラリアの通貨であるオーストラリアドルも資源国通貨と呼ばれています。

石炭や鉄鉱石などは国の輸出量の半分以上を占め、経済的にも不安要素が少ない国です。

これらの輸出量の3割近くが中国に輸出されています。このような背景もあり、オーストラリアドルは中国経済の動向にも左右されます。

中国の経済指標発表時にオーストラリアドルも反応して値が動くときがあります。これは中国と経済的につながりがあることが要因のひとつとして挙げられます。

中国経済が良好であれば、オーストラリアドルにプラスの要因があると判断されます。反対に中国経済がかんばしくなければ、オーストラリアドルにマイナスの要因があると判断されます。

2008年には高金利通貨として投資家にとても人気がありましたが、その後10年で金利が約5.7%以上も下落しています。

ニュージーランドドル(キウイドル)- NZD

ニュージーランドドルは、別名キウイドルとも呼ばれます。ニュージーランドの国鳥が「キーウィ」であることが名前の由来です。

経済面においてオーストラリアと結びつきが強いため、オーストラリア経済の影響を受けます。さらにオーストラリア経済と結びつきが強い中国経済の影響も受けます。

オーストラリアと同じくニュージーランドもメインの輸出国となるのが中国です。

輸出量全体の2割以上が中国への輸出となっています。このような関係性から、ニュージーランドドルはオーストラリアドルと似通った値動きをする傾向があります。

ニュージーランドドルも資源国通貨と言われています。ですが石油や鉄鉱石といった産出物ではなく、酪農業になりますのでオーストラリアやカナダなどの「資源」とは少し性質が異なります。

為替相場での通貨取引量を把握しよう!ドル・円・ポンド?FXでもっとも取引されている通貨は?

ドルや円、ポンドなど各通貨ごと取引量にも違いがあります。

例えば2019年の取引量を例に挙げると、取引量がもっとも多い通貨は米ドルです。

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スキャルピング,fx,通貨,ペア,おすすめ出所:「Triennial Central Bank Survey of Foreign Exchange and Over-the-counter (OTC) Derivatives Markets in 2019、September 2019」よりFXプロップトレーダー佐藤作成

米ドルの取引量は世界でもダントツで、2位のユーロは米ドルの取引量の36%程度しかありません。

全世界における米ドルのシェアがいかにあるかが分かります。

3位の日本円はユーロの取引量の更に半分ほどです。日本円は世界第3位の取引量を誇りますが、それでもアメリカドルの18%程度しか取引されていないのです。

4位がポンドでこちらは日本円とたいして差はありません。

5位がオーストラリアドルでポンドの更に半分の取引量です。5位以下順番にカナダドル、スイスフランと続きます。

ニュージーランドドルにいたってはわずか2.1%しかありません。

2位のユーロ以下、10位のニュージーランドドルまでの取引量をすべて合計して、ようやく米ドルの取引量と並ぶのです。

為替相場における取引量を知ることでFXに最適な通貨がわかる!

為替相場における取引量を知ることにより何がわかるのでしょうか。

これらの統計を見てわかることは「ボラティリティ(変動率)」です。取引量が少ない通貨ほどボラティリティが高いのです。

ニュージーランドドルやスイスフラン、カナダドルなどはボラティリティの高い通貨であることがわかります。

ボラティリティが高いということは、値動きが乱高下しやすいと言えます。流動性が低く値動きが不規則になりがちで、値が飛ぶこともあります。

スキャルピングトレードなどFXの短期取引では、ボラティリティの高い通貨が好まれる傾向にあります。

為替相場における通貨ペアの取引量もおさえておこう!

FXでは通貨単体の取引量だけでなく、通貨ペアとしての取引量もおさえておく必要があります。2019年度の事例では、もっとも取引量が多い通貨ペアはユーロ/米ドルです。

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スキャルピング,fx,通貨,ペア,おすすめ出所:「Triennial Central Bank Survey of Foreign Exchange and Over-the-counter (OTC) Derivatives Markets in 2019、September 2019」よりFXプロップトレーダー佐藤作成

2位は米ドル/円ですが、ユーロ/米ドルの半分の取引量にとどまっています。

通貨ペアとしての取引量も、ユーロ/米ドルが世界で圧倒的シェアを誇っています。

3位がポンド/米ドルですが、米ドル/円とたいして差はありません。

4位のオーストラリアドル/米ドルになると更に少なくなり、ポンド/米ドルの半分程度にとどまります。

5位の米ドル/カナダドル以降はほとんど僅差になっています。

為替相場における各通貨ペアの特徴を知ることもFXでは重要!

通貨ペアごとでも、それぞれ値動きに特徴があります。

取引量が多く流動性の高い通貨ペアは値動きがなだらかであまり活発に動かない傾向があります。

逆に取引量が少なく流動性の低い通貨ペアは値動きが乱高下しやすく活発に動く傾向があります。

こちらでは取引量の多い上位7通貨ペアにおける値動きの特徴を解説いたします。

  • ユーロ/米ドル(EUR/USD)
  • 米ドル/円(USD/JPY)
  • ポンド/米ドル(GBP/USD)
  • オーストラリアドル/米ドル(AUD/USD)
  • 米ドル/カナダドル(USD/CAD)
  • 米ドル/スイスフラン(USD/CHF)
  • ユーロ/ポンド(EUR/GBP)

ユーロ/米ドル(EUR/USD)

ユーロ/米ドルは取引量が多いため、流動性が高くなだらかに動くのが特徴です。

スプレッドも狭い場合が多く、初心者でもトレードがしやすい通貨ペアと言えるでしょう。欧米ではとても人気がある通貨ペアです。

トレンドが発生するとしばらくはその方向へトレンドが続く特徴もあります。

米ドル/円(USD/JPY)

通貨ペアでの取引量が世界第2位の米ドル/円は、ユーロ/米ドル同様に流動性が高く動きがなだらかです。

スプレッドも狭く乱高下しにくいため、初心者でもトレードがしやすいと言えるでしょう。

トレンドが出にくく1日を通してレンジ(もみ合い状態)になりやすい特徴があります。

ポンド/米ドル(GBP/USD)

ポンド/米ドルは別名ケーブルとも言われます。イギリスと米国間で、海底ケーブルを通してレートの送受信をしていたことからこのように呼ばれています。

イギリスと米国はどちらも経済が強く、ダイナミックな値動きをします。米国経済指標発表時には、米ドルと連動し値が乱高下することもよくあります。

オーストラリアドル/米ドル(AUD/USD)

短期ではそれなりに強い値動きがありますが、長期目線だと比較的なだらかに動いている印象があります。

トレンドが出るとトレンド方向へしばらく勢いが続く特徴があります。

米ドル/カナダドル(USD/CAD)

米国とカナダの株式市場開場時間、立会時間帯はともに同じです。そのため活発に値が動く時間帯も同じです。

米ドルは世界の基軸通貨ですので、一日を通してそれなりの値動きはあります。ですがカナダドルの場合はニューヨーク市場が開場するまでほとんど値動きはありません。

米ドル/スイスフラン(USD/CHF)

スイスフランじたいは、通常それほど値動きが活発ではありません。その理由としては、スイスフランが安全資産としての価値があるからと言えます。

つまり有事の際や世界情勢が不安定なときにしか、取引が活発にならないことが理由に挙げられるのです。

通常の為替相場においては、取引量が少なく流動性もあまりない通貨ペアですが、ボラティリティも出づらいため、相場が安定しているときには中々動きづらい通貨ペアと言えます。

ユーロ/ポンド(EUR/GBP)

ユーロとイギリスは地理的に近く、歴史的にもつながりがあります。またこの二国間には強い貿易関係があります。

値動きの予測が難しく中々動きが読めない通貨ペアです。

為替相場の主役はドル?円?それともポンド?FXに最適な通貨とは?まとめ

為替相場における各通貨の特徴をおさえておくことは、FXを行う上でとても重要です。

各通貨の特徴を把握することで、FXを有利に進められるようになります。